視力1.2以上の人は本当に目が良いの?とオプトメトリストのお話

メガネ

日本では視力が良いほど目が良いと認識されています。

このような考え方になったのは諸説ありますが、戦時中に敵兵をいち早く発見できる者が優れていると考えられたからではないかと言われています。

眼鏡業界では「視力が良い=目が良い」ではありません。

結論をいうと

目が良い=視力が良い+両眼視機能が良好+目が健康であるです。

視力は「見る能力」の一部に過ぎません。

視力が良くても他の機能が低下している可能性もあります。

良く見えているのが無理して頑張って見ているのか、自然に見ているのかでは意味が異なります。

世間ではあまり知られていない「見る能力」の一部をご紹介します。

視力以外の見る能力(一部)

目を寄せる力(輻輳力)

子供の頃、寄り目をして遊んだ経験はないでしょうか?

寄り目も重要な視機能の一つです。

目を寄せる力を専門用語で輻輳力(ふくそうりょく)と言います。

輻輳力が弱い、つまり近くを見るときに目を内側に寄せることができないと物がダブって見えてしまいます。

目を大きく寄せることができれば輻輳力が強いと言えます。

輻輳力の簡単な実験があります。

  • 目の前に人差し指を立ててその指先を見てください。
  • 指先を見たまま顔へ近づけて下さい。
  • なるべく人差し指がダブらないように(分離しないように)頑張って見てください

目を寄せる力に限界が来るとダブって見えます。これがその方の輻輳力の最大値になります。

(厳密には調節性輻輳と呼ばれますが、ここではわかりやすくするため単純化しています。)

指先がダブって見えた距離が重要になります。

目と指先の距離が短ければ短いほど輻輳力が強いです。

目と指先の距離が8㎝よりも離れていると輻輳力が弱いと言われています。

輻輳力が弱いと近くで物を見るときに疲れやすくなったり、片方の視線がずれてしまったりします。

快適性が失われてしまいます。

ただし、輻輳力は後述する調節力と密接に連動しているため調節力が弱いから目が疲れるとは限りません。

ピントを合わせる力(調節力)

ピント(焦点)を合わせる力を専門用語で調節力と言います。

スマホのカメラで写真を撮るときに被写体を鮮明にするため(ピントを合わせ)に画面をタップしませんか?

人間の目も同じ事をしています。

ただし、人間のピントを合わせる能力はスマホを凌駕します。

また、簡単な実験です。

  • スマホのカメラを遠くにピントを合わせて下さい
  • 素早く近くの物にカメラを向けて下さい。

一瞬、画像が乱れた後ピントが合いませんでしょうか?

今度はスマホを使わずにご自分の肉眼で同じことをします。

遠くの物を見てピントが合ったら近くの物を見てください

ボヤけることなくきれいなピントを保ったまま見えたはずです。

もし、ちかくのピントが合わないようなら屈折異常や視機能異常、ご自分の視機能の能力を超えた距離を見ている可能性があります。

遠くから近くを見たときにカメラでは一瞬ピントがずれますが人間の目はずれて見えません。

厳密言うと人間の目もカメラと同じで一瞬ピントがずれています。

なぜ、ずれて見えないかというとピントを合わせる処理が速いため感じることができないからです。

人間の目は最速のオートフォーカス機能が備わっています。

ただし、加齢や視機能低下、屈折異常(近視、遠視、乱視の発生)によりオートフォーカス機能が遅くなります。

近くがはっきり見えなくなります。

世間一般に知られているのは老眼です。

老眼はピントを合わせる力が衰えた状態のことを言います。よく勘違いされますが、遠視、近視、乱視とは関係ありません。

老眼になると近くが思うように見えなくなったり、疲れやすくなったりして快適性が低下してしまいます。

目が良いとは

冒頭でも述べたように「視力が良い=目が良い」ではありません。

視力以外にも見る能力があるからです。

その能力とは両眼視機能です。

両眼視機能とは両眼で物を正しく見る能力です。

その他に目が健康であることです。

「目が健康=目の病気がない」という意味です。

つまり、目が良いという意味は、視力が良くかつ両目で正しく物を捉えて目に病気がないことです。

視力が良い、両眼視機能、目が健康をもう少し詳しく解説します。

視力が良い

視力が良い目安は視力1.0です。

そもそも視力とはどういうものなのでしょうか?

視力とは簡単に言うと、ランドルト環(視力検査で使う「C」のこと)の切れ目の隙間をどの程度見分けられるかという能力です。

ここでは、詳しいことは省きますが、視力1.0が正常値と定められております。

視力が1.0見えれば正常でよく見分けられていると言えます。

ちなみに、視力には1.2、1.5、2.0と1.0以上の判定値が存在しますが、これれが見えると遠視疑いがありますので正常とは呼べないです。

遠視は屈折異常のことであり正常ではありません。

両眼視機能が良好

両眼視機能とは、両目で正しく物を見る能力です。

両眼視機能は同時視、融像、立体視に分類されます。

それぞれ簡単に言うと…

  • 同時視…右目と左目に映った像を同時に見る能力です。
  • 融像…右目と左目に映った像を脳で一つに見る能力です。
  • 立体視…物を立体的に見る能力です。

立体視を得るためには同時視を行い融像ができなければ得ることができません。

つまり、立体視ができれば両眼視機能は確立されていると言えます。

目が健康である

「目が健康である=目に病気がない」です。

白内障、緑内障、黄斑変性症などの病気あると視力低下や両眼視機能に支障をきたすから重要です。

「視力1.2以上の人は本当に目が良いの?」のまとめとオプトメトリスト

いかがでしたでしょうか?

日本ではあまり知られていないことをご紹介しました。

このような視力や見る能力に関する専門分野をオプトメトリーと言います。

アメリカで100年以上前にできた分野で今は世界的に広がり国家制度となっています。

国家制度として確立している国には国家資格であるオプトメトリスト(検眼医)が活躍しています。

オプトメトリストは日本では国家資格ではありませんが民間資格になります。

日本でオプトメトリーを学べるのは愛知県名古屋市にあるキクチ眼鏡専門学校だけです。

そして、実はもう一つ資格が存在します。

昨年に誕生した国家検定の眼鏡作製技能士です。

まだまだ、生まれたばかりの制度ですが、この制度が広く伝わり眼についての関心が高まることを願っています。

そして、私はもっと多くの方々に視力以外の見る能力が伝えられるようにビジョンケアに努めています。

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